感情の蓋

どうやら気持ちには蓋がある。

人の心は透明な瓶のように、

ある一定量の気持ちが入るようになっている。

嫌なことがあったり、

我慢しなきゃいけないことがあったりすると、

その瓶の中に気持ちを押し込める。

最初はその瓶の中に気持ちを詰め込んでいくと、

「窮屈だな」って感じる。

「ちょっと瓶が重くなったな」って感じる。

そして、瓶の中に詰められた気持ちは、

最初はそれぞれ騒いで叫んで、声なき声を上げている。

苦しみや悲しみが騒ぎ始めると、

胸が苦しくなり、涙が止まらなくなったり。

怒りが騒ぎ始めるとお腹が痛くなったり、

色んな所が痒くったり、イライラしたり。

脱力感、空虚感が騒ぎ始めると、

全身に穴がぽっかり開いたように感じたり。

寂しさが騒ぎ始めると、

人肌が恋しくなり、

誰彼構わずに、人と一緒にいたくなったり。

気持ちが騒ぎ始めると、大変だ。

だから僕たちは、詰めた瓶の蓋を閉じる。

蓋をしてしまえば、騒いでいても声が聞こえないし、中身も見えないから安心だ。

そうして、僕たちは気持ちに蓋をする。

すると、慣れてくる。

瓶に気持ちを詰め込むのに、蓋をするのに慣れてくる。

慣れたらもうお手の物。

何を言われても、どんなことがあっても、

瓶に詰め込めばいいんだから。

でも、どんどん詰め込んでいくと、

気持ちに鈍感になっていく。

嬉しいことも、楽しいことも、

イライラすることも、悲しいことも、

少しずつ自分から失われていくかのように、

気持ちを感じなくなってくる。

それは、沢山気持ちを詰め込んできたから。

そして、詰め込むしかなかったから。

そうやって、自分を大事にする方法しかあなたの心は知らなかったから、

仕方のないことなのだ。

でも、徐々にあなたは気づいていく、

泣きたい時に泣けないのは、辛いんだって。

みんなが「楽しいね!」って、笑って言い合っている時に、

自分だけが取り残されたように、ぽつんとしていて、

自分だけ何にも感じないのは、なんだか辛いんだって。

「ねぇ、本当に楽しいの?あなたって何考えているのかわからない。」って、

言われる度に、「自分が教えてほしいくらいだよ…。」って、

自分の気持ちがわからない辛さは、苦しいんだって。

それでも、あなたは冷たくないんだよ。

酷い人間でもないんだよ。

そうやって生きていくしかなかったんだ。

きっとそうでしょ?

好きで選んだわけでもない。

きっとそうでしょ?

だから、あなたは何にも悪くない。

だからこう考えてみよう。

ちょっとだけ瓶に詰め込み過ぎてしまって、

もうなんにも入らないほど、ぎゅうぎゅうなんだって。

ぎゅうぎゅうだともう何も入らないでしょ?

入らなかったらこぼれちゃうでしょ?

ダムも水がもう入らないと決壊しちゃって、

大変なことになっちゃうでしょ?

だから、あなたの心がそんな気持ちなかったことにしちゃうんだ。

あなたの心が決壊しないように。

だから気持ちを感じないんだ。

気持ちがこれ以上叫んだり、騒いだりしたら、

あなた自身が決壊しちゃいそうだから。

だから、あなたの心があなた自身が決壊しないように、

門番をしてくれていて、守ってくれているんだ。

必死で守ってくれているんだ。

だから、気持ちを感じないからって落ち込んじゃダメだよ。

あなたの気持ちは壊れてなんていないんだから。

今でもあなたの心には門番がいて、

一生懸命にあなたを守ってくれているんだから。

あなたの為に心は動いてくれているんだから。

あなたの心は1ミリも壊れていないんだから。

あなたの心はあなたのことをずっと見捨ててなくて、

ゆっくりとまた、ダムから水が流れていくのを信じているんだから。

だから今は気持ち(感情)を感じなくても、大丈夫。

心はいつまでもあなたを待ってくれているから。

心があなたを守ってくれているから、ゆっくり休もう。

ゆっくり休んだら、

少しずつ思い出そう。

自然が好きなら、好きだった場所に行ってみよう。

好きな風にあたってみよう。

でも、きっと最初は何にも感じないよ。

驚くほどちょっとだけしか感じないよ。

でもでも、最初はそんなものだって。

心のリハビリだから、少しずつ始めていこう。

いきなり歩き始めるのはちょっと大変でしょ?

そして、いきなりダムが決壊したら、

いきなり瓶の蓋が空いてしまったら、

きっとそれはそれでちょっと大変だからね。

だから、あなたのペースで歩き始めましょ。ね?

著者プロフィール

野川 仁
野川 仁
元引きこもりの心理カウンセラー。現在はカウンセリングをしつつ、講師としも、毎週(土)講義を行ってる。目指すは、「記憶に残らないカウンセラー」。カウンセラーのおかげより、自分の力で前に進めた実感を持ってもらうべく、日々奮闘中。理想への道のりはまだまだ長い!